サマタ瞑想というものがあります。
仏教の流れをくんだ瞑想法ですね。
サマタ瞑想には約40種類ものやり方があるそうです。
ですが、目的はすべて同じです。
ここでは、もっともシンプルなサマタ瞑想のやり方をお話します。
サマタ瞑想の目的は、集中力をつけること
サマタ瞑想には目的があります。
それは、集中力をつけるということです。
本当の瞑想というのは、
頭の中になにも考え事がない状態です。
サマタ瞑想は止行とも呼ばれます。
それゆえに、どこにも集中していない状態です。
だって、集中する対象がないんですから。
でも、いきなり本当の瞑想状態になるのはかなり難しいです。
たいてい、頭の中にいろんな考え事がでてきてしまいます。
瞑想状態になることを心が邪魔してくるんですね。
そこで考え出されたのがサマタ瞑想です。
呼吸という一点に集中することによって、
他の考えを頭の中から締め出すという方法が考えだされました。
言ってみれば、浮き輪みたいなものかもしれません。
いきなり泳ぐことはできないので、
まずは浮き輪を使って、
浮く練習をするような感じですね。
本当の瞑想状態になるための補助道具として、
呼吸を使うという感じです。
サマタ瞑想が本当の瞑想そのものというわけではないんです。
そのことは知っておいたほうがいいかもしれません。
本当の瞑想のための集中力強化法という感じですね。
どこかに座ります。座禅を組む必要はありません。イスでもソファーでもOK
それでは、サマタ瞑想の具体的なやり方です。
ここでお話するのは、伝統的なやり方ではないです。
サマタ瞑想の目的と本質さえ理解しておけば、
形式的なやり方をする必要はないと思います。
サマタ瞑想現代版という感じでしょうか。
まずは、どこかに座ります。
あぐらをかいたり、座禅を組む必要はありません。
いや、組んでもいいんですけどね。
でも、座禅は慣れていないと難しいと思います。
とくに、結跏趺坐(けっかふざ)という本格的な座禅は、
ほとんどの人には難しいのではないかなと思います。
なので、イスやソファーに座ってもいいと思います。
別に、体育座りをしてもいいと思います。
でも、長時間の体育座りは意外に疲れてくるので、
座り慣れたイスとかソファーがいいかもしれませんね。
そして、目を閉じます
座ったら、次に目を閉じます。
目を閉じなくてもいいかもしれませんが、
最初のうちは目を閉じたほうがいいと思います。
目に入ってくる情報に、
心が反応してしまう可能性がありますから。
例えば、窓の外で小鳥がチュンチュンしていたら、
気になってしまいますよね。
「あ、小鳥がチュンチュンしてる」とか。
目を閉じることで、
そういう可能性をなくすことができます。
まあ、聴覚は残ります。
でも耳栓をする必要はないと思います。
気になる人はしてもいいかもしれませんが。
スマホのメール着信の音とかは、結構、心が反応してしまう音です。
呼吸に意識を集中します。数を数える必要はありません。自然な呼吸でOK
座って、目を閉じたら、
次に、呼吸に意識を向けます。
呼吸に意識を集中させます。
サマタ瞑想の種類によっては、呼吸の数を数えるとか、
呼吸そのものを自分でコントロールするやり方もあると思います。
そのほかにも、思考やイメージにラベリングしていくという方法もあると思います。
でも、そういうことはまったく考えなくてOKです。
体が無意識に呼吸するのに任せてください。
ただ単に、呼吸している自分に気づいているだけでOKです。
呼吸をすることで、
鼻の内側に、空気が出入りしているのを感じると思います。
鼻の下の産毛に、呼吸が当たっているのに気づくかもしれません。
とにかく、呼吸に意識を集中させます。
ちなみに、大事なのは、
わざわざ気づこうとする必要はないというところです。
自分から気づこうとする必要はないんです。
むしろ、自分から気づこうとはしないことが重要です。
気づきが起こるときには、勝手に起こります。
考え事をしていることに気づいたら、呼吸に意識を向けなおす
呼吸に意識を集中しても、
なにか考え事をしてしまうということは頻繁に発生します。
これは誰しもがそうなります。
知らぬ間に、なにか考え事をしているんですね。
そして、しばらくすると、「ハッ!」と、自分が考え事をしていることに気づきます。
それは当たり前のことなので、
それに対してどうこう思う必要はありません。
「勝手に考え事をしてしまった自分はダメなやつだ〜」
とか思う必要はないんです。
むしろ、そんなことは思わないでください。
考え事をしていることに「ハッ!」と気づいたら、
また、呼吸に意識を向けなおすだけでいいんです。
それをひたすら繰り返します。
これが、もっともシンプルなサマタ瞑想のやり方です。
時間は臨機応変でOK。1分でも5分でも30分でも1時間でも
ちなみに、サマタ瞑想を行う時間は、
臨機応変でいいと思います。
だいたい目安として30分とか言われることもありますが、
人によっては、それはとても長く感じることだと思います。
特に、最初のうちは5分だって結構長いものだと思います。
なので、時間を決めないというのもありだと思います。
やめたくなったらやめるという感じですね。
1分だって、5分だっていいと思うんです。
もちろん30分でも1時間でも。
時間が長いほど集中力を高めるトレーニングになるのは確かですが、もっと大事なのはサマタ瞑想を継続することです。
(関連記事:瞑想はトータルで何時間ぐらいする必要がある?)
無心でいる状態の、心地よさを知る
サマタ瞑想の目的は、集中力をつけることです。
そして、集中力がついてくると、
サマタ瞑想中に、無心でいられる状態を経験するようになってきます。
呼吸に意識を集中しながら、
無心でいる状態が続く状態です。
それは、本当の瞑想の一歩手前です。
浮き輪を使って泳いでいるのですが、
もうちょっとで浮き輪がなくても泳げるかもという状態です。
そのときの、心地よさを十分に堪能してみてください。
これも、わざわざ気づこうとする必要はなくて、
あるとき、勝手に気がつきます。
「無心の状態は心地がいいな」って。
欲望を持ちながらサマタ瞑想をするのは危険かもしれません
ちなみに、
「サマタ瞑想をすることは危険をともなうのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
たしかに、瞑想の中には危険をともなうものもあるかもしれません。
でも、サマタ瞑想はとてもシンプルなものです。
限りなく安全だと思います。
ただ、呼吸に意識を集中するだけですから。
瞑想の中には、なにか神のようなものをイメージして、集中するだとか、呼吸を自分でコントロールしようとする瞑想法もあります。
神秘体験を引き起こすことを目的とする瞑想もあると思います。
たしかに、そういったものは危険かもしれません。
サマタ瞑想の次のステップがヴィパッサナー瞑想?
多くの場合、サマタ瞑想というのは集中力を鍛えるためのものであり、その次のステップにヴィパッサナー瞑想があると言われると思います。
ヴィパッサナー瞑想というのは、観行とも呼ばれます。
頭の頂点から足のつま先まで、意識を少しずつズラしながら体全体をスキャンしていくようにする瞑想方法です。
ブッダはヴィパッサナー瞑想で悟ったと言われることがありますが、それは何かの勘違いです。
さきほど、サマタ瞑想というのは本当の瞑想状態になるための補助道具と言いました。浮き輪みたいなものだと。
であるなら、ヴィパッサナー瞑想というのは、スキューバダイビングをするようなものです。
サマタ瞑想以上に意志の力を必要とします。
「ヴィパッサナー瞑想をするぞ!」という明確な意志の力が必要になります。なにしろ、体全体をスキャンしていくんですから。
実のところ、それゆえに、サマタ瞑想よりも集中しやすいという側面もあります。
浮き輪でプカプカ浮かんでいるよりも、スキューバダイビングをするほうが好みという人もいるでしょう。
でも、その先に悟りがあるわけじゃありません。
むしろ、ヴィパッサナー瞑想は神秘体験を引き起こしやすいです。僕も、ヴィパッサナー瞑想中に神秘体験をしたことがあります。
本当の瞑想というのは、意志の力を必要とすることなく、静けさを保っている状態です。
そこでは、サマタ瞑想をしようとする意志、ヴィパッサナー瞑想をしようとする意志が邪魔になります。
あくまでも、サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想は、本当の瞑想状態を保てるようになるための補助道具です。
まとめ
というわけで、
サマタ瞑想のもっともシンプルなやり方をお話しました。
僕は、伝統的なやり方をする必要はないと思っています。
大事なのは、サマタ瞑想の目的と本質を理解しながら行うことなんじゃないかと。
たしかに、座禅には意味があったりするんだと思います。
長時間、座った状態を維持しようと思ったら、
結跏趺坐(けっかふざ)が1番適しているんだと思います。
あぐらだと長時間座り続けるのは難しいです。
でも、現代にはイスやソファーがあります。
それを活用してもいいのではないかなと思います。
(関連記事:サマタ瞑想では、呼吸と眉間どちらに意識を向けるのがいいのか?)
(関連記事:瞑想にゴール(目標・目的)はあるんでしょうか?)